意外にポンコツなのかもしれません。
アメリカのプリンストン高等研究所(IAS)とイスラエルのワイツマン科学研究所(WIS)で行われた研究によって、人間の脳は物語を1度におおよそ4段階までしか細分化して意識できないことが示されました。
脳はどうやって複雑な物語を「四つのフォルダー階層」にぎゅっと収め、必要な場面だけをすばやく取り出しているのでしょうか?
研究内容の詳細は『Physical Review Letters』および『Learning Memory』にて掲載されました。
目次
- 謎だった「要約脳」の仕組みを追え
- 物語記憶の新常識「4×4ルール」
- フォルダー脳の可能性と限界
謎だった「要約脳」の仕組みを追え

物語記憶の研究は古くから行われてきました。
英国のバートレット博士による古典的実験では、物語の記憶はその理解(解釈)と密接に結びついており、人によって想起内容に大きな差異が生じることが示されています。
その後の研究でも、物語の理解・想起には既有の知識構造(スキーマ)が影響を与えると考えられてきました。
つまり、意味のある物語の記憶は単純な暗記ではなく、読んだ人それぞれの知識と解釈によって再構成されるのです。
このように複雑な物語記憶を一般的な法則で説明することは難しく、少数の仮定で記憶現象を説明する単純モデルの構築は容易ではないとされてきました。
実際、ランダムな単語リストや数字列の記憶については、記憶できる項目数や忘却のパターンなど多くの定量的知見が蓄積しており、提示された項目数に対して平均何項目を想起できるかといった関係を予測するモデルも提案されています。
しかし物語のような意味を持つ情報では、人は物語を逐語的ではなく要点を要約して記憶するため、単純な語数では記憶の質を評価できません。
このような理由から、物語記憶に共通する定量的特徴を説明する理論はこれまで存在しなかったのです。