アジアのクラブ王者を決めるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)やAFCカップにおいて、シンガポールのクラブは長年苦戦を強いられてきた。ライオン・シティ・セーラーズがACL2でグループステージを突破するなど明るい兆しもあるが、東アジア(日本、韓国、中国)や西アジア(サウジアラビア、カタールなど)の強豪クラブとの間には、依然として大きな実力差が存在する。リーグ全体のレベルアップと国際競争力の向上は、SPLの長年の課題だ。

シンガポール国内ではプレミアリーグなど欧州サッカーの人気が絶大で、国内リーグへの関心は必ずしも高いとは言えない状況が続いてきた。ライオン・シティ・セーラーズの資金力によるスター選手の加入や、リーグのプロモーション活動強化により少しずつ関心は高まりつつあるが、それは観客動員数の伸び悩みという形で表れ、リーグ発展の足かせとなっている。

こうした状況を打破すべく、シンガポール政府とFASは2021年に「Unleash the Roar!(咆哮を解き放て!)」と名付けられた国家的なサッカー強化プロジェクトを発表した。エリート育成アカデミーの設立、指導者養成の強化、学校サッカーとの連携などを通じて、2034年のW杯本大会出場という大目標を掲げている。

このプロジェクトが成功すれば、国内選手のレベルが底上げされ、SPLはより魅力的で競争力のあるリーグへと変貌を遂げるだろう。もしかしたら近い将来、シンガポール代表はW杯アジア予選で日本代表を苦しめる存在となるかも知れない。


風間の移籍は、単なる一選手のキャリアの選択にとどまらない。それは、日本人にSPLという発展途上にあるリーグの存在を教えてくれる。何しろ、東京23区とほぼ同じ面積の国土に約592万人の人口がひしめいているのがシンガポールという国で、観光立国であると同時にアジア有数の金融センターでもある。