今回の実験では、800Wという家庭用電化製品も動かせるレベルの電力を、8.6kmもの距離に30秒間レーザーで届けることに成功しました。
これは、これまでの「230Wを1.7km」、あるいは「もっと低い出力で3.7km」の伝送という過去の記録を大きく上回る快挙です。

加えて、実験中にはレーザー送電によってポップコーンマシンを作動させるというパフォーマンスも行われ、視覚的にも成功が示されました。
これは映画『Real Genius』へのオマージュであり、この映画ではレーザーでポップコーンを作る象徴的なシーンが登場します。
無線で電力を送り、8.6kmも離れた場所でポップコーンが出来上がるなんて夢のある話でしたが、今やそれは現実なのです。
では、DARPAはいったいどうやってワイヤレス電力伝送の新記録を樹立したのでしょうか。
電力伝送の新記録はどのように可能になったのか?将来はドローンでの中継も

この革新的な送電は、PRAD(Power Receiver Array Demo)と呼ばれる装置によって実現されました。
PRADは、球体構造を持つ装置で、小さな開口部からレーザー光を内部に取り込みます。
取り込まれたレーザーは、内部のパラボラミラーで拡散・反射され、複数の高感度な太陽電池パネルに照射されます。
これにより、レーザー光は再び電気へと変換され、外部機器へと供給されるのです。
変換効率は現在のところ約20%に留まっていますが、DARPAはこれはあくまで初期段階のものであり、今後の技術改良により大幅な効率向上を目指しています。
そして現在はまだ地上間での送電に留まっていますが、DARPAはすでに次なるステップに着手しています。
それが、「空中中継プラットフォーム」の導入です。
