さて、石破総理は17日午前(日本時間)、カナダでのG7の前にトランプ米大統領と30分間会談した。総理は、米政権が日本に課した関税措置を見直すよう求めたとし、会談後、記者団に「双方の認識が一致していない点が残っている。パッケージ全体の合意には至っていない」と述べた。

日本への関税は、目下、自動車・部品に25%、鉄鋼・アルミニウムに50%の追加関税をかけられている。加えて4月からの相互関税として各国一律の10%と、7月9日からは上乗せ分の14%が加わるので、鉄鋼への関税は77%になる。総理は、USSへの2兆円を超える投資と米政府の意向に沿った黄金株を含む「NSA」の見返りとして、日本の鉄鋼への関税引き下げをどの程度強く働きかけたのだろうか。

何しろ、鉄鋼に関しても日米共通の「敵」は中国である。トランプ関税も本来の標的は中国である。その中国の鉄鋼生産量は世界の約半分を占め、その過剰生産に各国は悩まされている。何しろ、日鉄44百万t(4位)とUSS16百万t(24位)を足した60百万t(23年)ですら、1位の中国宝武鋼鉄集団の131百万tの半分にも及ばないのだ。

日鉄とUSSの提携が承認されたとはいえ、その投資効果、つまりシナジーの発揮までには数年単位の時間が必要である。それまで77%の関税の掛った日鉄の鉄鋼で米国市場のフィジビリティースタディをせよ、というのでは巨額投資をした日鉄にとり余りに酷だし、日米両国にとっても如何にも無駄な時間ではなかろうか。

USSへの技術移転が予想される日鉄の特徴ある製品には、「ハイテン材」と呼ばれる高張力鋼板およびその冷間プレス用鋼板、電磁鋼板や住金由来のシームレスパイプなどが挙げられている。「ハイテン材」と同冷間プレス用は自動車の軽量化に必須の鋼板であり、自動車用モーターに使われる電磁鋼板と共に、トランプの目指す自動車の米国生産に必ず貢献するはずである。