石破総理がトランプと相まみえることになった。課題は山積しているが、あれこれ言うよりも、筆者は例のUSスチールの一件を冒頭に持ち出したらよいと思う。そしてこう言うのだ。

「日鉄は米国に工場を立地することが出来ますよ。それにより雇用創出も出来るし、米国車が米国製の日鉄の高品質な鋼板を安く使うこともできます。でも、それでは米国の鉄鋼業の仕事を少なからず奪うことになる。それなので、日鉄はUSスチールのインフラと雇用を維持するために投資を決意したのです。この投資は、米国の国益に必ずや資すると思います。」

かなりの確率でトランプは乗って来るように思うが、どうだろうか。

両社がリリースで「米国の鉄鋼業への前例のない投資を実施し、10万人以上の雇用を守る」とする「歴史的な提携」の枠組みの詳細の多くは明らかにされていない。が、リリースや各社の報道を含めて推察すれば以下のようになるだろう。

日鉄はUSSを完全子会社化(株式の100%保有)する USSは米政府に「黄金株(golden share)」を付与する USSと日鉄は米政府と「国家安全保障協定(National Security Agreement:NSA)」を締結する NSAには28年までに約110億ドルの新規投資(新規工場建設「green field project」の初期投資を含む)を行うとある(投資総額は140億ドル超) 米政府はUSSの取締役3人のうち1人を直接任命し、2人の人事も拒否できる

その「黄金株」についてラトニック米商務長官は14日、日鉄は米政府の同意なしに本社をピッツバーグから移転させたり、USSの社名を変更したり、米国内の工場を閉鎖したりできなくなるとSNSに投稿した。これは両社のリリースが、「NSAには、ガバナンス(米国政府への黄金株付与を含む)、国内生産、貿易問題に関するコミットメントも含まれています」と述べていることと符号する。

USスチールの工場で演説するトランプ大統領 ホワイトハウスXより