カブトムシは硬い外骨格に守られていますが、ハチの強靭なアゴで脚に噛みつかれると、しがみつく力が奪われ、クヌギからポロリと落下していきました。
さらに凶暴なスズメバチはカブトムシを木から落とすだけでは飽き足らないようで、地上に落ちたカブトムシを執拗に追い回し、攻撃を続けていたのです。

当初10匹以上もいたカブトムシは、ハチの襲来からわずか数分で完全に排除され、樹液場を乗っ取られていました。
オオスズメバチによる排除行動は、観察を行った3日間の早朝すべてで確認されています。
では、もしオオスズメバチの襲来がないとすれば、カブトムシの活動時間帯に変化は出るのでしょうか?
スズメバチの襲来がないと、どうなる?
そこでチームは、スズメバチ除けのスプレー「スズメバチサラバ(株式会社 KlNP)」を使って、オオスズメバチを樹液場から継続的に駆除する実験を行いました。
早朝〜正午にかけて、樹液場にやって来たオオスズメバチにスプレーを噴きかけ、クヌギの木に降り立つのを阻止しました。
その結果、夜行性と思われていたカブトムシの実に半数以上が、そのまま正午まで樹液場に留まり続けたのです。
このことから、カブトムシは根っからの夜行性というわけではなく、オオスズメバチがいなければ、明るい時間帯でも十分に活動しうることを示しました。

つまり、カブトムシは鬼の居ぬ間に食事を済ませ、スズメバチのやって来る明け方になると、そそくさとその場を退散しているようです。
これと別に、近年の研究で、シマトネリコという木に集まるカブトムシは、昼間になっても樹液を吸い続けることが明らかになっています。