当日、約10人の親族・友人が順番に法廷で語り、AIで再現された“クリス本人”の映像が最後に流されました。
上映を許可したトッド・ラング判事は「家族の意図は理解できる」と述べ、傍聴席にはすすり泣きが広がりました。
映像を見終えたウェイルズさんの14歳の息子は「もう一度おじさんに会えて声を聞けてよかった」と母に伝え、家族にとっても大きな癒やしになったといいます。
AIが証言する倫理的な問題について

今回のAI被害者映像は、裁判所に新たな感動をもたらした一方で、法廷におけるAI技術の利用範囲について様々な議論を巻き起こしています。
ホルカシタス受刑者の弁護人ジェイソン・ラム弁護士は、判決直後に刑を不服として即座に控訴(上訴)しました。
ラム弁護士はラム弁護士はABCの取材に対し、「AIで被害者を“よみがえらせ”、本当に言ったか分からない言葉を口にさせるのは問題だ」と述べ、今回の映像は「不正確な作り物」であり、被害者の口に他人の言葉を入れる行為だと批判しています。
陪審を経た有罪評決自体は事実に基づくものですが、このAI映像が量刑判断に影響を及ぼしたか否かについて、上級審で争点となる可能性があります。
実際ラム弁護士は、控訴審では「判事がAI映像にどれほど依拠して量刑を決めたか」が問われるだろうと指摘しています。
法律家や技術の専門家からは、今回のケースに対する評価は概ね慎重ながら肯定的です。
AIの法廷利用を研究する研究者も、「多くの場合、AI生成の証拠は誤解や偏見を生む可能性があり、有害になり得る」とし、重大な法的問題は生じていないとの見方を示しています。
アリゾナ州最高裁のアン・A・スコット・ティマー首席判事(法倫理・新興技術専門)も、「被害者本人の声を代弁しようとする今回のようなケースは、AIによる虚偽映像利用の中では最も許容し得る部類だ」と述べています。