9割引の「過剰医療」が日本経済を滅ぼす

被保険者がほとんど負担しない後期高齢者医療は、実質的には国営なのだから、すべて税で負担するのが筋だが、その財源がないので源泉徴収で捕捉率100%のサラリーマンに負担が集中する。このような暗黙の債務は年金・医療・介護を合計して約1600兆円というのが鈴木亘氏の計算である。

この問題を根本的に解決するのは困難だが、最終的には国民皆保険という原則をやめる必要がある。生命にかかわる医療は公費負担の1階建てとし、2階部分は民間の医療保険に強制加入とするオランダ方式がいいのではないか。

いま医療・福祉・介護に従事する人口は1100万人で、急増する介護が人手不足の原因になっている。これが2040年には1300万人に増え、製造業を上回る日本最大の産業になるが、生産性はきわめて低く、現場の士気も最低である。9割引の過剰医療で、無意味な医療・介護が多すぎるからだ。

7月4日から始まるアゴラセミナー「人生100年時代:超高齢社会の制度と生き方」では、このような社会保障の問題だけではなく、長すぎる老後を高齢者がどう生きるかという問題も考えたい。