「米地裁、非生成AIによる著作権侵害訴訟フェアユース認めず」のとおり、非生成AIに対する著作権侵害訴訟の判決は2月に下りている。AI開発企業の主張したフェアユースは認められなかったが、AIが絡まなくてもフェアユースが認められ難いと思われる特殊なケースだった。
しかし、40件に上る生成AIに対する著作権侵害訴訟については、NYタイムズの提訴から1年半経過している現在も地裁判決すら下りていない。メディア業界とIT業界の巨人同士のガチンコ勝負となっただけに最高裁まで行くのではとの見方もある。となると、優に5、6年はかかる。このように法律による解決策には時間がかかるが、それを待っていては急速に進展する生成AI革命に置いて行かれるおそれがある。
アマゾンもAI戦略ではオープンAIやグーグルの先行を許していたので、遅れを挽回したいというねらいがある。両社の思惑が一致した結果が今回の提携である。
以上が提携に踏み切る最初の理由だが、これに続く第2の理由は、市場による解決策であるマスメディアとAI開発企業のコンテンツ利用に関するライセンス契約は増加傾向にあること。
ライバルのウォールストリート・ジャーナル紙やニューヨーク・ポスト紙は1年前からオープンAIと提携している。アマゾン創立者のジェフ・ペゾスが保有するワシントン・ポストも2025年4月、提携に合意した。
和戦両様作戦の相乗効果
第3の理由は、法律と市場の相互作用に関連して、ライセンス契約が普及すれば、NYタイムズは訴訟も有利に展開できる。有料で提供している記事まで「ただ乗り」されたと主張している同紙としては、記事に価値があることの証明にもなるからである。
メレディス・レビエン最高経営責任者(CEO)は今回の提携について、「高品質のジャーナリズムはそれにふさわしい対価を得る価値があるという長年掲げてきた原則にも合致する」と述べている。