さらに特筆すべきは、「水の安全性」です。
多くのハイドロゲル装置では塩分の漏出が問題となりますが、MITの装置ではナノ細孔を持たないマイクロ構造とグリセロール(保湿性の高い液体化合物)の添加により、リチウム塩の安定化に成功。
実際に収集された水は、フィルターなしでも飲料水基準をクリアしています。
そして、この装置の最大の利点はその拡張性と設置自由度です。
垂直型で省スペースのため、住宅の外壁や窓に複数設置すれば、家庭単位での水供給も可能となるのです。
バッテリーもソーラーパネルも不要なため、電力インフラのない地域でも稼働し、災害時の非常用水源としても有望です。
もちろん、このパネル1つだけでは誰かの喉の渇きを満たすのに十分ではありません。
しかし拡張性を活かして大量にパネルを並べるなら、この課題は簡単に解決できるでしょう。
現在、研究チームはこの技術のさらなる改良に取り組んでおり、新たな素材の開発やスケールアップも視野に入れています。
MITの窓サイズの水収集装置は、「どこでも、誰でも、いつでも」飲料水が得られるという未来をぐっと身近にしてくれる技術なのです。
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参考文献
MIT’s water harvester works in extreme climate without power or filters
https://newatlas.com/technology/mit-water-harvester-extreme-climate-power-filters/
Window-sized device taps the air for safe drinking water MIT engineers developed an atmospheric water harvester that produces fresh water anywhere — even Death Valley, California.
https://news.mit.edu/2025/window-sized-device-taps-air-safe-drinking-water-0611