クォーク同士をつなぐのは「強い力(量子色力)」と呼ばれる自然界最強の結合力で、その働きはグルーオンという媒介粒子によって、いわば“力の糸”として伝えられています。

この力の糸は太いゴムひもにたとえられます。

2つのクォークを引き離そうとすると、ゴムひもが伸びるときと同じように、その糸にエネルギーが蓄積され、張力が際限なく高まります。

この糸は、ゴムひもを強く伸ばしても太さが変わらないのと同じで、張力そのもの――たとえば 1 ギガ電子ボルト毎フェムトメートル程度――はほぼ一定です。

ところが距離を広げるほど、その一定張力が仕事をし続けるため、糸に蓄えられるエネルギーは「長さに比例して」増え続けます。

言い換えれば、1メートル伸ばすには1センチ伸ばすのに100倍(1メートルは1センチの100倍だから)のエネルギーが必要になる、という直線的な累積です。

「何を当然のことを言うのか?」と思った人……率直に言って、あなたはきっと物理が苦手なのでしょう。

磁石を思い浮かべればわかりますが、通常の粒子の結びつきは離せば離すほど、引き離しに必要な力は減っていきます。

しかしクォークの場合はそれがずっと一定なため、引き離しに膨大なエネルギーがかかったままなのです。

そう考えるとクォーク引き延ばしにかかるメカニズムがいかに異常かがわかるでしょう。

そして通常の輪ゴムならば張力が限界に達すると、切れてしまいますが、自然界最強の結合力は伊達ではありません。

限界時の挙動も全く異なるのです。

クォークに対して切れるくらいにエネルギーを注ぎ込むと、そのエネルギーがあまりにも大きいため周囲の真空(何もないと思われがちな空間)を揺り動かし、新しいクォークと反クォークのペアを瞬時に生み出します。

そしてもともと伸ばされていた糸は二本の新しい糸へと分かれ、元のクォークは現れたばかりの相棒と再び結びつきます。

そのため自然界最強の結合力は絶対に切れない……というわけではありませんが、切れるほどのエネルギーを注ぐことで新たなペアができてしまうわけです。