つまり最初の急膨張(インフレーション)といま進行中の加速をどちらも同じ量子反発メカニズムとして自然に導いたのです。
これらは従来、全く別々の要因(インフレーション用の仮想的なエネルギー場と、宇宙定数的なダークエネルギー)で説明されてきましたが、本モデルでは跳ね返りそのものの物理によって両方が統一的に説明されています。
研究者たちも「跳ね返りによって生じた反動が宇宙に急膨張の段階をもたらし、しかもそれは仮定上の未知の場によるのではなく、バウンスそのものの物理によることが分かりました」と強調しています。
また研究チームは「今回得られた解により、バウンスが起こるのは単に可能なだけでなく、正の空間曲率と量子排他原理という必要条件が揃えば避けられない現象であることを示せました」と述べ、宇宙のバウンスが理論上必然的に起こり得ることを指摘しました。
観測で試される跳ね返り宇宙

この新モデルによって、従来のビッグバン宇宙論が抱えていた特異点問題(物理法則が適用できない始まりの点)に一つの解決策が提示されました。
また、インフレーションやダークエネルギーを説明するために新たな未知の場を導入しなくても、既知の物理法則だけで観測事実を再現できる道筋が示された点も大きな意義です。
さらにこのモデルは、初期宇宙の他の謎—例えばなぜ短時間で超大質量ブラックホールが形成されたのか、ダークマターの正体は何か、銀河はどのように階層的に成長したのか—といった問題にも新たな光を当てる可能性があると研究者らは述べています。
実際、本モデルでは、バウンス後の初期宇宙に残されたブラックホールなどの「遺物」が、ダークマターや銀河形成の起源に関連する可能性を指摘しています。
興味深いことに、この仮説は単なる理論的な思考実験に留まりません。
検証可能な予測を伴っている点で科学的なテストに耐えうるとされています。