私はこうしたちょっとした「真善美」の哲学的由来を尋ねた西洋哲学の読書遍歴により、ついに「知情意」の概念との関係性に辿り着いた。
結論を言えば、「真・善・美」は人間が価値を認識する際の最も基本的な三要素であり、「知・情・意」は人間の精神活動の三要素であり、それぞれが密接に関連し互いに呼応しながら人の認識や行動を形作っており、このことにより我々の精神活動が統合的に発展していくと考えられる。
もっとも夏目漱石の『草枕』の冒頭にあるように「智に働けば角が立つ、情に竿させば流される、意地を通せば窮屈だ」ということで、人間関係は難しく「知・情・意」のバランスを余程うまく取らないといけないということだ。
もう一つの教訓は洋の東西を問わず、人間界の哲理は同じであるが、西洋の方がより分析的、科学的に理解しているかもしれない。東洋はより直感的だと思う。
従って、東西の両方の哲学を学べば、様々な事柄や我々自身の生き方についてより理解が深まろう。私の書物や思想は東洋哲学の影響を強く受けているので西洋哲学も読みながら、書かれていることが正しいかどうか判断してもらい、読者自身の思考を深めていただきたい。そうした私の思いを込めて本書のタイトルを『真善美の追求』とする。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2025年6月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。