今回の研究では、「なぜチャンネルの切り替えが退屈を生じさせるのか」という部分を扱っていません。
それでもタム氏は、「動画を早送りしたり切り換えたりする行為は、視聴体験の満足度、魅力、意義を低下させます」と述べています。
また、そのようにしている自身の体験から、次のようにも述べています。
「私はコンテンツに本当に没頭したり、楽しんだりしていないことに気づきました。
ストーリーの詳細を見逃したり、ある動画から別の動画に切り替えるのに多くの時間を費やしたりすることがよくありました」

確かに提供されるコンテンツが少ない以前の時代では、私たちは、それぞれの動画を「映画館で1つの作品を楽しむ」時のように、集中して細部までじっくりと味わっていました。
実は、この楽しみ方が、私たちに満足感をもたらしていたのです。
このような問題が表面化するのは、無料のコンテンツが増えたということも関係しているかもしれません。
お金を出して買ったコンテンツなら、私たちは多少退屈でも辛抱強く最後まで楽しもうと努力するでしょう。しかし現代は多くの動画やゲームが無料で楽しめます。
また無料であるがゆえに、作り込みの甘いとりあえず作ってみたというコンテンツが溢れてしまっているのも、1つの作品に集中しづらくなっている原因かもしれません。
映画に関してもレンタルビデオ店に出かけていちいち借りていた時代なら、つまらない映画を借りて失敗したと思っても、とりあえず最後まで見たかもしれませんが、サブスクで大量の映画やドラマを次々に見られる現代では、退屈なシーンがあればすぐ他の作品に視聴を切り替えてしまう人もいるでしょう。
多少退屈に感じても1つの作品を最後まで楽しむという姿勢は、コンテンツが溢れる現代だからこそ、一層必要なのかもしれません。
私たちはついつい面白いものだけを効率的にどんどん消化していきたいという欲求に囚われ、つまらない作品に出会うと早々に視聴を切り上げて次に行こうと考えてしまいがちです。