同業他社と一線を引く「ゴールドジムらしさ」
他のフィットネスクラブと比較した場合の違いや優位性などについても聞いた。
「フィットネス業界で我々は異質だと思います。競技志向の利用者が多いのが、他社との最大の違いかもしれません。我々のマーケットはそこまで大きくありませんが、その分ターゲット層が絞られているため、サービスを集約しやすくなっていると感じます。他のフィットネスクラブは施設のすばらしさや安さ、そして通いやすさなど、弊社とは異なる魅力やニーズがあります。多様性のあるニーズからさまざまな施策が運営されていることは、業界全体として素晴らしいことです。
我々は競技性特化型なのでそれが優位性である一方、それが通いづらさや入会しづらさを感じる方々もいる理由だと分析しています。よく『一般的な人がもっと気軽に通いやすいようにしてほしい』というお声をいただきますが、そのニーズに応えている他のフィットネスクラブがあるので、他社と同じような方針では考えていません」(同)
しかし、ゴールドジムの公式サイトでは、女性のダイエットやシニアの健康維持など、筋肉を鍛えること以外のコースも提案している。それについてはどういった考えなのだろうか。
「ゴールドジムが日本に来たばかりの30年ほど前は、まだ女性は筋トレに対してあまり好意的ではありませんでした。しかし時代とともに価値観が移り変わっていき、実際女性がトレーニングをするとどのように変化していくかというのを実証していくと、自らの力で自分を変える楽しさを知っていただけるようになったのです。そこで弊社の企業方針に合う形で女性向けといったコースなども提案しています」(同)
競技性特化型という根幹となる企業方針はブレさせないようにしつつ、それでいて“0か100か”の両極端の思考ではなく、時代に合わせた柔軟性も持ち合わせているということのようだ。
一部でしか24時間営業をしていない理由とは
「とはいえ弊社の会員数は十数万人で、他のフィットネスクラブに比べて少ない方でしょう。ただ、同じ想いを持ったお客様が集まっているおかげでご愛顧いただけて、顧客満足度の高さを維持できているとも言えます。業績もコロナ禍以降は黒字続きで、売り上げは伸びていますので、大変ありがたく思っています」(同)
また、ゴールドジムは、基本的に24時間営業をしていないジムのほうが多いのもひとつの特徴。近年、「エニタイムフィットネス」や「chocoZAP」といった24時間営業をしているジムが多いため、“24時間営業していないフィットネスクラブ”は珍しい。
「あまり知られていないかもしれませんが、実は日本で初めて24時間営業のジムをやったのはゴールドジムなんですよ。2000年に東京・大井町で日本初の24時間営業のフィットネスクラブを立ち上げ、現在も全国約20店舗が24時間営業しています。
ただ、24時間営業を始めたきっかけはフィットネスクラブのトレーナー向けだったんです。日中や夜の早い時間帯は教える立場のため、自分のトレーニングをする時間がなかなか取れないというトレーナーたちからの声が多くあり、深夜にもジムが開いていたら便利だということで、24時間営業を実現した次第です。
そういった背景で24時間営業のジムを設けているので、弊社としてはいまでも深夜帯のユーザーはトレーナーという認識で、あくまでメインのビジネスモデルとして考えていないため、20店舗程度にとどまっています」(同)