また自民党提案で、図3に示すように中野サンプラザの土地・建物の権利を株式会社まちづくり中野21から中野区への移転することで、固定資産税2.22億円がゼロとなる。

図3 サンプラザの中野区への寄付の意味※詳細は「サンプラザ再開発計画白紙へ:中野区議会からみた顛末」

そして、中野サンプラザの土地建物を管理している株式会社まちづくり中野21には借金元本43億円があり、その利子返済分6600万円があったが、今年度中に中野区が立て替えて、借金は全額返済するため、この6600万円もゼロとなる。したがって、営業時の純利益1.34億円、固定資産税免除分2.22億円、利子返済分0.66億円を足し合わせると概算で年間4.22億円、これが中野サンプラザ再稼働による純利益である。これが続けば、28年間で100億円の改修費用も十分に回収できる可能性がある。

区は解体ありきで、再利用する場合のシミュレーションをしっかりとしていない。区は解体する方針であったとしても真摯に残せる可能性も探っていく態度が必要だと考える。

定期借地・権利変換を選択する条件

権利変換による400億円の転出補償金を当てにした新庁舎整備費、中野サンプラザの借入金返済などは区の貯えから支払うことになり、権利変換にこだわる必要はなくなった。そこで定期借地という選択肢が生まれる。

しかしながら、定期借地による開発は、土地の権利を細分化せずにすむ一方で、分譲住宅の建設には向かない。マンションの法定耐用年数は47年、寿命はメンテナンスの状況や構造によって異なるものの、47年はひとつの基準値である。

全国で築50年以上のマンションが41.5万戸を超える中で、実際に建替えられたのはわずか2.4万戸、全体の6%以下に過ぎない。建替えが極めて困難なことを考えれば、定期借地で住宅を入れるのであれば、せめて賃貸マンションにとどめるべきである(図4、図5)。

図4 築40年以上のマンションストック数の推移国土交通省HP資料に筆者加筆