「にぎわい」は経済波及効果を中心に考える必要がある。私は昔、7年間、年の半分を東京ドームに隣接する大学の中で寝泊まりする生活をしていて、東京ドームにおいてジャイアンツの試合、旧ジャニーズコンサートなどがあれば、イベント終了後、飲み屋はたちまち満席になる様子を目の当たりにした。
中野サンプラザが閉館して約2年経つが、そのせいで売り上げが減ったという声は聞かない。サンプラザは演歌やアイドル、オタク系の興行が多く、来場者は「推し活消費」などに励み、周辺地域にお金を落とすような属性ではなかった可能性がある。
例えば、中野区内の大イベント「中野ランニングフェスタ」や「東北絆まつり」などがあれば、地域の飲食店が満席になるなど、経済効果が明確に現れる。仮に再整備するのであれば、スポーツイベントにも対応できる複合アリーナなど、地域全体に波及効果のある「真のにぎわい」を生み出す施設設計が求められる。
一方、「いこい」の機能を盛り込みすぎると、どの要素も中途半端になりかねない。区民の声を丁寧に拾い上げ、優先順位をつけた上で、最適なバランスを見極めることが必要である。
事業手法の選択肢:現存施設再活用と定期借地・権利変換による再開発の是非
再整備の方法としては、現存施設の再活用、定期借地による再開発、権利変換による再開発の3つが考えられる。
本当に解体ありきで良いのか?:現存施設の再活用の可能性
新・中野サンプラザ再開発計画の頓挫により、現在、閉館したまま中野サンプラザが残っている状況である。
先日の「中野区施設の長寿命化計画、妥当か無謀か:中野サンプラザはどうなる?」で説明した通り、中野区は新たな区有施設整備方針で耐用年数80年とする。その方針に則れば、中野サンプラザは建築からまだ52年、つまり、あと28年間は利用できるポテンシャルがある。
5月28日、6月1日に「中野駅新北口駅前エリアのまちづくりに関する説明会」が開催された。説明会資料には図1の中野サンプラザの内部の写真が掲載されている。

図1 中野サンプラザの現状中野駅新北口駅前エリアのまちづくりに関する説明会資料、pp.21-22