ケーブルは骨盤の内側をぐるりと回り込み、お尻の柔らかな脂肪に潜り込むと細いコードに枝分かれし、肛門まわりと外陰部の皮膚・筋肉、さらにはクリトリスや亀頭までもくまなく張りめぐられます。
そんな陰部神経の太い枝の一つとして「下直腸神経」が存在しており、肛門から指先がようやく届く1〜2センチほどの浅い前壁に、小さなセンサー線をびっしり伸ばしています。
ここは感覚のホットスポットで、男性ならすぐ裏に前立腺が、女性なら腟の壁のすぐ向こうにクリトリスの内部構造(脚=クルラ)が走っているため、この内側の点を軽く押すだけで外側を直接愛撫したかのような信号が脳へ届き、内側からゾクッと震えるような快感が立ち上がりやすいのです。(※なぜ前立腺刺激が男性にとって快感なのかは3ページ目の「なぜ男性は前立腺刺激で快感を感じるのか?」の部分で解説していますので参照してください)
リズミカルな刺激が続くと、その信号は脊髄を経て骨盤底の筋肉を反射的に締めたりゆるめたりさせ、同時に脳では快感物質のドーパミンやオキシトシンがあふれ、ある強さと時間がそろった瞬間に「絶頂スイッチ」が入ってオーガズムへと達します。
ただしこの前壁センサーは非常に敏感で、潤滑が足りなかったり急に強い圧をかけたりすると、心地よさが一瞬で「痛い」「不快」という信号に反転します。十分に潤滑し、ゆっくり体を慣らせば、男女どちらにとっても体の奥からふくらむ独特の深い快感を安全に味わえる仕組みになっているのです。
しかしながら医療・性科学の分野でアナルセックスに関する研究の多くはHIVや性感染症などリスクに焦点を当てたり対象も異性愛の女性や男性同士のセックス(MSM)に偏っていたりしました。
性的快感や満足オーガズムといったポジティブな側面や直腸内のどの場所が気持ち良いのかといった問いは十分に検討されてこなかったのです。
こうした背景から米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(調査開始当時)などの研究チームは肛門性交時の快感やオーガズムに関する初の大規模調査を実施しました。