筆者は“省エネモード”とか“消化試合モード”と呼んでいますが、これが「静かな退職」の本質でしょう。
フォローしておくと、かつてのように定年が55歳で、しかも年々売り上げも組織も右肩上がりで大きくなっていた時代だったらそれでも問題なかったんでしょう。
大卒者ならほぼもれなく課長以上に出世出来たからまだまだ40代以上でもギラギラしていた人が多かったし、省エネモードに突入してしまっても、せいぜい55歳定年までの10年ちょっとで済みますから。
90年代以前にも消化試合モードの人はいるにはいましたけど、ニュースになるほどの規模ではありませんでしたね。
でも、21世紀の現在、日本企業を巡る環境はがらりと変わってしまいました。実質的な定年は65歳に延び、政府は70歳への引き上げも視野に入れ始めています。
にもかかわらずどの業種でも組織のフラット化、効率化がすすめられポストは慢性的に不足、多くの人間が早々に消化試合モードに突入することを余儀なくなれます。
環境の変化に人事制度が対応できていない結果、望まずとも静かな退職を選択せざるをえない人達が増えてしまったということでしょう。
ただ、一つ疑問が残ります。なぜ、彼らは転職という選択肢をとらないんでしょうか。
「ゼネラリストとして育成されてしまったため、転職したくても出来ない」という人もいるんでしょうが、筆者はそこには別の事情があると見ています。
それが2つめの理由で、一言でいうと「社会保険料の過重な負担」です。
筆者は10年以上前から一貫して「サラリーマンの社会保険料ぼったくられすぎ問題」を唱えているので実感としてよくわかるんですが、この5年ほどで急激にサラリーマンのこの問題への認知が高まりましたね。