つまり、ルール違反を阻むものは何もないような状況です。

それにもかかわらず、6〜7割の人がこのルールを守りました。

ルールを守ることで最初に獲得した通貨20MUのうち半分以上を失うにもかかわらずそうしたのです。

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6~7割の人はメリットが無くてもルールを守る / Credit:Canva

また他の実験からは、他人の行動が分かる状況にて 1人でも違反者がいると、ルールを守る人が減少することが分かりました。

しかし、たとえ6人の仲間がルール違反を行った場合でも、参加者の55%はなおルールを守ると分かりました。

この“筋金入りのルール遵守派”は、誰が何と言おうと、どんな誘惑を受けようとルールを破らないタイプといえますが、その割合が半分以上という結果は興味深いものです。

別の段階では「違反に対する罰」を導入しましたが、予想通り、これによってルールを守る人はさらに増えました。

そしてルールには、たとえそれが無意味なものに思えても、次のような効果があると分かります。

  • もともと内発的にルールを守る人が一定数存在する
  • 社会的な“空気”によって行動を決める人が多い
  • 他人の違反は感染するが、影響は限定的

この知見は、公共政策や職場マネジメントにおいて非常に有効です。

たとえば、「エコバッグを使いましょう「電車内でのマナーを守りましょう」といった“お願いベースの啓発”も、ルール自体があるだけで“従う空気”を生み出す可能性があるのです。

そしてもしかすると、たとえ意味がないように思えるルールだったとしても、多くの人は「ルールなんだから守らなきゃ」と感じ、その人間らしさが、社会を安定させているのかもしれません。

では次に、あなたが急いでいて、赤信号で車が全く見当たらない横断歩道を前にしたら、どうしますか?

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参考文献

Most people obey arbitrary rules even when it’s not in their interest to do so, experiments show
https://phys.org/news/2025-06-people-obey-arbitrary.html