2つ目は、罰を受けるかもしれない、ご褒美がもらえるかもしれないといった、外からの動機づけであり、これはインセンティブ(Incentives)と呼ばれます。

3つ目は、周囲の人が「このルールは守るべきだ」と思っていたり、実際に守っていたりすることから生まれる“空気”のことであり、これを社会的期待(Social Expectations)と呼んでいます。

4つ目は、自分の行動が他人に迷惑をかけるかどうかを気にする気持ちであり、これは社会的な配慮(Social Preferences)として表現されました。

研究チームは、この4つの心のはたらきが重なり合うことで、人はルールを守るかどうかを決めていると考えました。

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横断歩道を早く渡ると「より多くの通貨が得られる」という実験 / Credit:Canva

そしてこのCRISPモデルを検証するため、1万4000人以上を対象に、ある実験を行いました。

その実験内容は非常にシンプルです。

参加者全員はオンラインでテストに参加し、マネーユニット(MU)という通貨が与えられます。

そして画面上で横断歩道を渡るというゲームを行います。

最初に与えられる20MUは、横断歩道を渡り終えるまで1秒ごとに1MU減少するため、参加者はできるだけ早く渡ることでより多くの通貨を入手できます。

しかしこのゲームには唯一のルールがあります。

それが、「赤信号が表示されている間は止まり、青になるまで待ってから進む」というものです。

当然ながらこのルールを無視すれば、参加者はより多くの通貨を入手できます。

では、どんな結果になったでしょうか。

多くの人は自分にメリットがなくても「ルールだから」それを守る

実験では複数の段階にわけて「なぜ人はルールを守るのか?」が検証されました。

特に興味深いのは、第1段階の実験であり、ここでは違反しても罰はなく、他人に迷惑もかからず、しかも匿名で参加できるようになっていました。