横断歩道で明らかに車が来ていないのに赤信号を待つ。
ポスターに「さわらないでください」とあれば誰も触れない。
そして、誰かが見ているわけでもないので、罰が課されることはない状況。
なのに私たちはなぜ律儀にルールを守ってしまうのでしょうか?
この人間行動の謎に迫ったのが、英ノッティンガム大学(University of Nottingham)の研究チームです。
彼らはオンライン実験によって、人は罰も報酬もないのにルールに従う傾向があることを実証しました。
その理由には、私たちの「深層心理」と「社会的な期待」が関係しているようです。
研究の詳細は、2025年5月26日付の『Nature Human Behaviour』誌に掲載されました。
目次
- 私たちはなぜルールを守るのか?
- 多くの人は自分にメリットがなくても「ルールだから」それを守る
私たちはなぜルールを守るのか?
日常には無数のルールがあります。
法律、マナー、校則、職場ルール……書かれているものもあれば、暗黙の了解も含まれます。
私たちはこれらに縛られ、また守ることで秩序を維持しています。
しかし、全てのルールが合理的とは限らず、中には「守っても意味がないのでは?」と思うようなものもあります。
では、どうして人は、時に無意味にも思えるルールを守るのでしょうか。

この疑問に対し、これまで社会科学はさまざまな仮説を立ててきました。
例えば、「罰を恐れるから」、「他人の目があるから」、「人に迷惑をかけたくないから」、「“従うべき”という道徳的信念があるから」などです。
そこで今回の研究では、「人がルールにどれだけ従うかは4つの要素によって決まる」という考えである「CRISPモデル」を開発しました。
その1つ目は、他の人がどう思おうと関係なく「ルールだから守るべき」と感じる内側からの気持ちであり、これをルールに対する敬意(Respect)と呼びます。