「魅力的」「美しい」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは女性の顔かもしれません。
芸術作品や広告、SNSのフィルターに至るまで、“美”の象徴として女性の顔が描かれることは少なくありません。
ですが、この「女性の方が見た目が美しい」という感覚は、はたして世界共通なのでしょうか?
それとも一部の文化に根ざした偏見にすぎないのでしょうか?
この問いに、ドイツのマックス・プランク経験美学研究所(MPIEA:max planck institute for empirical aesthetics)の研究チームが答えを出しました。
世界50カ国以上、1万人以上の評価者によるデータを統合・解析するという前例のない大規模メタ分析を通じて、「女性の顔は男性よりも一貫して魅力的だと評価される」という事実を明らかにしたのです。
研究の詳細は、2025年5月26日にプレプリントサーバー「bioRxiv」で発表されました。
目次
- 人間の「美の基準」を問う研究
- 人間は共通して“女性的な顔”を美しいと感じる
人間の「美の基準」を問う研究
動物界では、たいていオスのほうが派手な装飾や鮮やかな体色を持ち、メスに対して自らをアピールします。
孔雀の羽根やライオンのたてがみなどがその例です。
つまり、自然界において「美」はオスに備わるものとされてきたのです。
ところが人間では、このパターンが逆転しているように感じられます。
一般的に「美しい」とされるのは女性であり、男性は「渋さ」や「頼もしさ」など別の軸で評価される傾向があるように思えるのです。
この逆転現象については長年議論されてきましたが、過去の研究の多くは文化的に限定されており、サンプル数も少ないため、包括的な検証は困難でした。

では実際に人間は、多くの生物とは異なり、「女性に美しさ」を感じているのでしょうか。