ここで重要なのは、この恐竜が「中間的な特徴」をもっていたことです。
頭の骨や歯の形は幼いティラノサウルス・レックスに似ていますが、一方で骨の一部にはティラノサウルス類に特有の進化した形質も見られました。
まさに、ティラノサウルス類の進化の“橋渡し”となる恐竜だったのです。
さらに研究は、新種の発見のおかげで巨大ティラノサウルスの進化シナリオも明らかになってきました。
これまでティラノサウルスの進化は北米起源説が濃厚でしたが、研究者らは「ティラノサウルス類の祖先がまずアジアで誕生し、そこから北米に渡って巨大化。さらに一部がアジアに戻って新たなグループに分かれていった」という可能性の高いシナリオを提示しました。
その中でカンクウルウのグループは、巨大なティラノサウルスを生み出しただけでなく、アジアに戻った後に体重750キロほどの「アリオラムス類」という細身のグループも生み出したと考えられています。
「竜の王子」の発見により、今後さらにティラノサウルスの進化史の全貌が明らかになっていくと期待されています。
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参考文献
大型ティラノサウルス類の起源と進化の解明~ティラノサウルスの進化の鍵は”成長スピードの違い”~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/06/post-1917.html
New Tyrannosaur Species Could Be a Missing Link to The Giants
https://www.sciencealert.com/new-tyrannosaur-species-could-be-a-missing-link-to-the-giants
元論文
A new Mongolian tyrannosauroid and the evolution of Eutyrannosauria
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08964-6