しかしながら、中間型ティラノサウルス類は化石記録に乏しく、どのような進化プロセスを辿っていたのかがよくわかっておらず、長らく「進化の空白地帯」とされてきました。

そんな中、今回新たに注目されたのが、1970年代にモンゴルで発掘されたいくつかの骨格標本でした。
研究チームは博物館の倉庫で眠っていたこれらの化石を改めて詳しく分析。
すると驚くべきことに、既存のどの恐竜にも当てはまらない、まったく新しいタイプのティラノサウルス類が見つかったのです。
体の大きさは中型、形もユニークで、これまで見たことのない特徴をいくつも備えていました。
新種のティラノサウルス「竜の王子」
チームは、この新種に「カンクウルウ・モンゴリエンシス(Khankhuuluu mongoliensis)」との学名を与えました。
これはモンゴル語で「モンゴルの竜の王子」を意味します。
なぜ“王子”なのかというと、それはこの恐竜が「ティラノサウルス・レックスのような巨大な王に至る前の段階」にあるからです。
つまり、まだ小さい存在だけれど、確実に“王の血”を引いている―そんなイメージから名づけられたのです。
カンクウルウは全長4メートル、体重およそ750kg、腰の高さは2メートルほど。
走るのに適した長い脚と、軽くて細い頭蓋骨を持っていたと考えられています。
つまり、がっしりとしたティラノサウルス・レックスとは違って、より俊敏で機敏な動きをしていたと見られます。
