しかしながら、中間型ティラノサウルス類は化石記録に乏しく、どのような進化プロセスを辿っていたのかがよくわかっておらず、長らく「進化の空白地帯」とされてきました。

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カンクウルウの見つかった骨の位置(白色)と人間とのサイズ比較/ Credit: 北海道大学 – 大型ティラノサウルス類の起源と進化の解明~ティラノサウルスの進化の鍵は”成長スピードの違い”~(2025)

そんな中、今回新たに注目されたのが、1970年代にモンゴルで発掘されたいくつかの骨格標本でした。

研究チームは博物館の倉庫で眠っていたこれらの化石を改めて詳しく分析。

すると驚くべきことに、既存のどの恐竜にも当てはまらない、まったく新しいタイプのティラノサウルス類が見つかったのです。

体の大きさは中型、形もユニークで、これまで見たことのない特徴をいくつも備えていました。

新種のティラノサウルス「竜の王子」

チームは、この新種に「カンクウルウ・モンゴリエンシス(Khankhuuluu mongoliensis)」との学名を与えました。

これはモンゴル語で「モンゴルの竜の王子」を意味します。

なぜ“王子”なのかというと、それはこの恐竜が「ティラノサウルス・レックスのような巨大な王に至る前の段階」にあるからです。

つまり、まだ小さい存在だけれど、確実に“王の血”を引いている―そんなイメージから名づけられたのです。

カンクウルウは全長4メートル、体重およそ750kg、腰の高さは2メートルほど。

走るのに適した長い脚と、軽くて細い頭蓋骨を持っていたと考えられています。

つまり、がっしりとしたティラノサウルス・レックスとは違って、より俊敏で機敏な動きをしていたと見られます。

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カンクウルウ(中央)とその他のティラノサウルス類(左、アリオラムス;上、ティラノサウルス;右、ゴルゴサウルス)/ Credit: 北海道大学 – 大型ティラノサウルス類の起源と進化の解明~ティラノサウルスの進化の鍵は”成長スピードの違い”~(2025)