いずれにせよメジンスキー氏は、ロシアは長期の戦争に耐えうるし、耐えて結果を出してきた実績がある、と言いたかったようだ。

これは明らかに、ウクライナ側に「長期戦に持ち込んで事態を有利に進めていけないか」という意見があることを、強く意識している。

日本でも、停戦を拒絶し、長期戦に持ち込むことによって「プーチン政権の崩壊を待つ」といった主張をされる方が少なくない。「ウクライナは勝たなければならない/この戦争は終わらない」主義の方々である。

万が一キーウが陥落してもなお、最後の一人になるまでゲリラ戦も覚悟して戦い続ければ、やがてソ連がアフガニスタンから撤退していったように、ロシアはウクライナから撤退していくだろう、といった主張でもある。

つまり、「ウクライナは勝たなければならない/この戦争は終わらない」主義の方々の論拠は、最後の一人なっても戦い続ける永久戦争に持ち込めば、ロシアは撤退するのでなければプーチン政権が倒れる、という予測である。

メジンスキー氏は、この見方に挑戦し、否定しているわけである。

果たしてこれは妥当な見方だろうか。上述のように、日本でも、「ソ連はアフガニスタンから撤退した、アメリカはベトナムから撤退した」、といったことを言いたがる方々も多々いらっしゃる。だがこれらは全て状況が異なりすぎている。

断続的な押し引きをしたオスマン帝国や、大英帝国、日本などのとの戦争の事例は、微妙だ。たとえば日露戦争後に樺太南部を割譲している。ソ連として、ロシア革命後に第一次世界大戦から離脱した際のソ連のブレスト=リトフスク条約では、ロシア帝国領の整理を行った。

だがメジンスキー氏が示唆するように、ロシアが陸続きの領土の併合を宣言して、その領地の防衛を「祖国防衛戦争」と位置付けた後、敗北を認めて領土を譲渡したような事例は、歴史上、見ることができない。ロシアにとっては、ロシア領の一部としてしまったウクライナ東部5州の死守は、すでに「祖国防衛戦争」になっていることには注意が必要だ。