ヴィーラント博士は「もし私の理論的考察が正しければ、重力波の出力を最小単位の量子にまで分割して考えることが可能になるでしょう」と述べています。
(※臨界値未満ではスペクトルが飛び飛びになる)
これは、重力波が光子のような粒子(仮想的な「重力子」)の集まりとして記述できる未来を示唆しています。
重力波の検出技術がさらに発展し、非常に高精度でそのエネルギー分布を観測できるようになれば、出力の量子化(離散性)という現象が確認される日が来るかもしれません。
もっとも、プランクパワーはあまりに巨大な値のため、人類が実験室で直接この上限に迫るような状況を作り出すのは到底不可能です。
したがって、この理論を検証するには宇宙からの観測(高エネルギー宇宙現象のデータ)や、量子重力理論のさらなる発展を待つ必要があるでしょう。
この論文は査読付きで公開され、量子重力理論の最前線として注目を集めています。
ヴィーラント博士らは引き続き、本研究で用いたアプローチを発展させながら、重力が因果構造(物事の前後関係)に与える影響など、宇宙の極限で起こる不思議な現象の解明に取り組んでいるとのことです。
重力と量子論の融合は難問中の難問ですが、そこから生まれる新たな物理像は、私たちの宇宙観に革命をもたらす可能性を秘めています。
「光速の壁」の先に潜む「出力の壁」――それは宇宙の基本法則のパズルを解く重要なピースとなるかもしれません。
今後の研究と検証の進展に、大いに期待したいところです。
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元論文
Evidence for Planck luminosity bound in quantum gravity
https://doi.org/10.1088/1361-6382/adb536
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。