4次元の場合、重力波のピーク光度はブラックホール合体の質量比やスピンなど無次元のパラメータだけで決まることが知られています。
(※詳しくは4 次元では次元解析で 長さスケールが消え、c,Gだけで光度が決まる。D ≠ 4 では追加スケールが必要)
これは光速や重力定数といった普遍定数のみで上限値が決められることを意味し、プランクパワーが自然に登場する理由とも言えます。
一方で5次元以上では、出力に長さのスケール(系の大きさや振動数など)が関与してしまい、同じような普遍的上限は導けなくなるのです。
私たちが住む宇宙がまさに4次元であるという事実も、この“出力の壁”が現実的な意味を持つ重要な要因です。
出力の壁が守る因果律と未来の検証法
今回示された「プランクパワー」という最大出力の存在は、物理学にとって大変興味深い意味を持ちます。
もしこの理論が正しければ、宇宙におけるあらゆる爆発現象や高エネルギー現象には絶対的なパワーの天井があることになります。
どんなに巨大な超新星爆発やブラックホール衝突でも、約10⁵²ワットを超える出力は物理法則上発生し得ないという制限です。
これはちょうど、どんな物体も光速を超えて動けないのと表裏の関係にあります。
「光速の壁」が因果律(原因と結果の順序)を守るための宇宙のルールであるように、この「出力の壁」も極限状態で宇宙の法則が自己矛盾を起こさないための安全装置と言えるかもしれません。
実際、重力波の出力に上限があることで、ブラックホール内部やビッグバン直後の振る舞いについて新たな洞察が得られる可能性があります。
重力波のパワーが無制限に大きくなり得ると仮定すると、因果関係が崩れたり時空そのものが安定しなくなったりする問題がありました。
しかし上限が設定されることで、極限環境でも物理法則の一貫性が保たれる道筋が見えてきます。
さらに興味深いのは、重力波のエネルギーが量子的な「粒」に分解できる可能性が示唆されたことです。