こうして「インバウンド客」が本格的ブームになったのは、2010年代の後半です。
しかし新規ホテルの開業には数年単位の時間が必要です。まして当時の日本には、超富裕層向け超高級ホテルは皆無。そもそも経験がないので、すぐには作れません。
インバウンドブームから数年経過して、訪日客が3,000万人を超えた2019年時点でも、世界の超富裕層が宿泊できる超高級ホテルは、極めて限られた数だったのです。
中には超富裕層でも、私たちが泊まるようなホテルに泊まる人たちもいるかもしれません。実際に、質素な生活をしているセレブも、いるにはいます。彼らは人気ラーメン店に並ぶのを楽しんだりします。
しかし多くの富裕層は、日本に多少興味があっても「日本良さげじゃん。あ、日本にはいつもの生活ができるホテル(=超高級ホテル)はないのね。じゃぁ、日本はスルーってことで…」となっていたわけです。
マーケティング的にいうと、せっかく興味を持った顧客も増え始めているのに「ポッカリと穴が空いたセグメント」でした。もったいないですよね。
最近、一泊数百万円〜1000万円超の超高級ホテルの開業が続いているのは、遅まきながら日本でも彼らの需要に応えられるようになった、ということです。
今は、日本も本格的に世界のリゾートの仲間入りをするフェーズなのでしょう。今後、これまで来日しなかった世界の超富裕層が普通に来日することで、日本の景色も変わるかもしれません。
そんな目線で超高級ホテル開業のニュースを見ていくと、私たちのビジネスに与える影響も見えてくると思います。
編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2025年6月10日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。