入社して数ヶ月で離職すれば教育費は未回収で赤字だが、人件費や将来の追加投資が膨らむ前に見切りをつけられる点で、その後1年、2年後に辞められるよりダメージは小さい。

企業側が気にするのは「離職率が高い会社」という評判であり、これは採用ブランドに響く。しかし、だからといってあまりに新人に合わせすぎて企業全体の合理性を欠き、既存社員のモチベーションを挫くなら本末転倒である。

新卒や若手は確かに貴重な存在だが、「お客様」ではないのだ。

「ミスマッチ0%」は不可能

採用現場の現実を知れば、どれだけ選考を厳しくしても完全フィルタリングは不可能だとわかる。

ミスマッチを防止するスクリーニングは学歴、インターン、適性検査、複数回面接など選考を多層化することだ。しかし、それでも実務とのミスマッチは一定発生する。

HR noteの記事によると、あの天下のGoogle社は面接最適回数を4回と定め、統計的に86%の的中率を確保しているが、あれほどのリーディングカンパニーでも100%にはならないのだ。

ならば「入ってみて合わなければ双方速やかに損切り」という前提で、

・リモート併用のトライアル雇用 ・メンター制度による早期フォロー ・入社半年でのジョブローテーション

等を整備し、ミスマッチをクレームなどと同列に考え、事前に「変数」として折り込むべきだろう。

辞めるなら早い方が傷が浅い

今度は働く側の視点に立って考えてみよう。正直、職場は実際に配属されて数ヶ月働かないと相性が分からない。

だが、だましだまし相性が悪いまま働き続けても結局やめてしまうなら早く辞めたほうが本人のキャリアにも傷は浅い。

二十代前半での転職はポテンシャル採用枠が豊富で、専門スキルより「学習意欲・素直さ」が評価されやすいためだ。逆にミスマッチを我慢して何年も働き続けた結果、若さが武器にならないタイミングで手を上げても困るのは本人だ。