過去の別の研究でも、脳の再教育で慢性的な痛みを軽減できることが分かっています。

【その痛みはどこから?】”脳の再教育”で慢性的な痛みを軽減できると判明

今回注目したのはEEG(脳波)神経フィードバックという技術です。

これは、脳波をリアルタイムで計測し、その状態に応じて視覚的なフィードバックを与えることで、本人が脳の活動状態を自己調整することを促すものです。

今回開発されたトレーニングゲームでは、プレイヤーはクラゲが漂う黒い海のような画面を見つめることから始まります。

脳が緊張している状態では水は暗く沈んでいますが、リラックスすると水が青緑色に変わっていきます。

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脳トレゲームの仕組み / Credit:UNSW

これは、EEGセンサーがアルファ波などリラックス状態の脳波を検知すると、即座に画面の色調を変化させる仕組みです。

プレイヤーは、何度もこの「海の色の変化」を経験することで、無意識に痛みを和らげる脳の状態=自己調整力を育てていくのです。

このゲームを用いた脳トレは、参加者の自宅で、1回20分程度のセッションを週5回・合計4週間(計20回)にわたって実施されました。

さらに、トレーニング終了後には直後および5週間後にフォローアップ期間を設け、持続的な効果や自己練習の成果を評価しています。

脳トレゲームで脳を変え、痛みを軽くすることに成功

この研究に参加したのは、角膜の神経障害性疼痛「CNP」を患う4人の被験者です。

彼らは事前に7〜17日間のランダムなベースライン観察期間を過ごし、日々の痛みの強さと生活への影響(pain interference)を記録していました。

その後、4週間のトレーニングと2回のフォローアップを経て、3人の参加者において著しい痛みの軽減が確認されました。

これは麻薬性鎮痛薬「オピオイド」と同等かそれ以上の鎮痛効果だったようです。

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クラゲの脳トレゲームでオピオイド並みの鎮痛効果が得られた / Credit:(左)Canva, (右)PainWaive,UNSW