フワフワと海を漂うクラゲのゲームをするだけで、どうしても治らなかった神経痛が和らぐ。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究者たちが、そんな新しい治療の可能性を報告しました。

今回の研究では、在宅で行えるEEG(脳波)神経フィードバック型のゲームを活用して、神経障害性疼痛という難治性の慢性痛を抱える患者の痛みを軽減することに挑戦しています。

研究成果は2025年4月12日付の学術誌『The Journal of Pain』に掲載されました。

目次

  • 神経の誤作動がもたらす「見えない痛み」
  • 脳トレゲームで脳を変え、痛みを軽くすることに成功

神経の誤作動がもたらす「見えない痛み」

慢性痛のなかでも、神経障害性疼痛(neuropathic pain)は特に治療が難しいとされています。

これは、末梢神経や中枢神経の損傷などが原因かもしれず、「痛み信号」が誤って脳に送られ続ける状態です。

たとえば、怪我は治ったのに痛みだけが続いたり、あるいは軽く触れただけで電気ショックのような激痛が走ったりするのです。

これらは神経の誤作動が引き起こしている可能性があります。

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角膜の神経障害性陣痛で苦しむ患者が対象の研究 / Credit:Canva

そのなかでも特に複雑なのが、角膜の神経障害性疼痛(CNP:corneal neuropathic pain)です。

角膜は身体の中で最も神経が密集している部分の一つで、レーシック手術、コンタクトレンズ、感染症、ドライアイなどの影響で神経が損傷することがあります。

患者は「眼が焼けるように痛い」「何かが入っているように感じる」と訴えるのに、眼科検査では異常が見つからないというケースも多く、医師ですら診断が困難です。

そして、既存の薬物療法や点眼治療では効果が得られにくく、慢性的な痛みに苦しむ人も少なくありません。

このような背景から、UNSWの研究者たちは神経の誤作動に対処するための、「脳や神経の信号を再構築する新しいアプローチ」が必要だと考えました。