実際、筋肉の成長にはサテライト細胞の役割が重要であることが知られており、筋線維に新たな核(マイオニュークレイ)を供給して筋肥大を可能にするプロセスに関与します。

今回、高負荷・低負荷の双方で遅筋線維のサテライト細胞プールが拡大したことは、軽い負荷でも筋肉の基礎的な適応メカニズムがしっかり働いていることを意味します。

研究チームはまた、本研究の実験デザインが実際のトレーニング現場に即したものである点を強調しています。

今回の被験者は両脚でそれぞれ異なる負荷を試しましたが、いずれも毎セット限界まで行うという点では共通していました。

総ボリュームは軽負荷が1.4〜2.9倍と大きくなりました。これは研究者が“現場同様にセットはそろえ、ボリュームは結果として差が出る”設計を意図したためです。

これは通常の筋トレでも行われる方法であり(高重量ならセットあたりの回数が少なく、低重量なら多くなる)、意図的に総ボリュームを制限しないことで現実的な条件を再現しました。

その結果、低負荷条件が本来持っている効果を引き出せたと考えられます。

研究者らは「本研究のアプローチは“現場の筋トレ”そのままで、複数セットを行う実際のシナリオを正確に反映している」と述べています。

言い換えれば、研究室レベルの実験ではなく現実のジムでのトレーニングそのままの条件で比べても、軽い負荷は十分に健闘したということです。

ただし、高負荷を使う利点が全く無くなったわけではありません。

今回、レッグエクステンション(膝関節の伸展動作)の筋力向上では高負荷の方が優れていましたが、これは動作が単関節で神経系の適応が大きくものを言う場面では依然として高重量が有利なのかもしれない、と研究チームは分析しています。

高重量を扱うことでより大きな神経系の興奮や筋出力の向上が得られ、特に特定の筋肉だけを使う種目ではその差が表れやすい可能性があります。