今回の研究により、「限界まで追い込むのであれば軽い重量でも筋肉を太くできるし、ある程度の筋力もつけられる」ことが示されました。

従来から知られていた「低負荷でも筋肥大はできる」という現象が、筋力の向上(特に複数関節を動員する大きな筋力発揮)にも及ぶ可能性が示唆された点で、画期的な知見と言えます。

研究チームも「これまで『重さは違っても筋肥大は同じ』と言われてきたが、多関節の筋力も同様に伸びる可能性がある」と述べ、軽負荷トレーニングによる筋力アップ効果に注目しています。

特にトレーニング経験者でこの傾向が確認されたことで、「高重量を扱わなければ筋肉も筋力も伸びない」という一般的な常識を改める必要性が出てきたと言えるでしょう。

では、なぜ軽い負荷でも筋肉が発達できるのでしょうか。

その鍵はトレーニングの「努力強度」にあります。

筋肉を大きくするためには筋線維に十分な負荷刺激を与える必要がありますが、それは必ずしも重いバーベルでなくても構いません。

重要なのは筋肉を疲労困憊させることです。

軽い重量でも回数を重ねていって最後には持ち上げられなくなる(オールアウトする)状態に達すれば、筋線維は十分な刺激を受けたことになります。

今回の結果はまさにその理論を裏付けており、研究者らは「広い反復回数の範囲で筋肥大は達成可能である。ただし努力を惜しまず各セットを限界まで行った場合に限る」と強調しています。

適切なフォームを保った上で限界まで追い込むことさえできれば、重量設定そのものは柔軟でよいというわけです。

これはトレーニング方法の幅を広げる心強い知見です。

さらに今回の研究では、軽負荷トレーニングによって筋肉中のサテライト細胞が増加することも確認されました。

しかもその増え方は高負荷の場合と変わらず、細胞レベルでも軽い重量のトレーニングが効果を発揮していることを示しています。

このような分子生物学的裏付けが得られたことにより、「重い重量を使わないと筋肉が本当に大きくならないのではないか」という疑念に対しても科学的な説明がつきます。