しかし一般相対論の範囲でそれが本当に可能なのか、可能だとすればどんな条件で起きるのか、明確な数学的基準はありませんでした。

「物理の神秘で計算するなら、一般相対論だって使ってみようじゃないか」――量子の次は重力だ、というわけです。

研究チームは一般相対論下での因果関係(出来事の順序)の変化を捉える理論ゲームを構築し、静的な時空では決して超えられない勝率の上限を導き出すことにしました。

重力と時空が計算機になる日

重力と時空が計算機になる日
重力と時空が計算機になる日 / 図の左側(パネル a)には、数学者オーギュスト・フェルディナント・メビウスが描いた有名な「メビウスの帯」のスケッチが載っています。帯の端を半回転ひねって貼り合わせると、内側と外側が一枚につながり、どれだけ歩いても“表”と“裏”を区別できない──そんな一方通行の不思議な面ができあがる様子を示す歴史的な挿図です。右側(パネル b)は、その帯をグラフ理論の言葉に翻訳した「7-メビウス・ラダー」の有向版で、14個の点(頂点)がハシゴ状に並び、端どうしが斜めに交差して閉じることで帯のねじれが表現されています。各頂点はゲームの参加者に対応し、矢印の向きは「この人からあの人へ情報が流れる」という通信の一方通行を示します。つまり図は、“ねじれた一枚の面”と“ねじれを持つ情報ネットワーク”を並べて示すことで、メビウスゲームがどのように時空のねじれ(因果のねじれ)をモデル化しているかを見せています/Credit:Physical Review A

提案されたのは「メビウスゲーム」と名付けられた多人数同時参加型の思考ゲームです。

「メビウスゲーム」は、時空の“ねじれ”を暴くかくれんぼだと思ってください。

舞台には 6 人以上のプレイヤーが並び、結び目をひとひねりした“メビウスのはしご”の上を情報が渡っていきます。

ルールは単純――審判が毎回ランダムに「送り手」と「受け手」の 2 人を指名し、送り手だけにこっそり 0 か 1 のビット x を教え受け手はほかの仲間と光速以下の通信だけを頼りに、この隠しビットを当てればチームの勝ちです。