ところが、いくつかの先行研究は、男女平等が進んでいる国ほど、性格を含む心理特性の性差がむしろ大きくなっていると報告しています。

この現象は社会の男女平等が進んでいるのに、個人では男女の性差が広がっていることから「男女平等パラドックス(gender-equality paradox)」と呼ばれています。

ただし、この男女平等パラドックスについては研究報告が十分ではなく、どれくらい確かなものなのかはよくわかっていません。

そこで研究チームは改めて、この男女平等パラドックスが実際に現代社会で起きている現象なのか包括的に検証してみました。

男女平等の社会ほど、性格や認知の性差は大きくなる?

今回の調査では、「社会の生活条件」と「男女の心理的特性の性差」の関係を調べた54件の先行研究をレビューしました。

調査対象国には主にヨーロッパ諸国が選ばれていますが、他にインドやケニアなどの国々も含まれています。

ここで調査された心理的特性の項目は、個人の性格特性や認知パターン(判断、想像力など)、対人関係(容姿や家事スキルの好み、性的行動など)、メンタルヘルス、STEM教育への選好性(※)などです。

※ STEM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)のことで、選好性はSTEM教育をどれくらい選ぶかを指します。

データ分析の結果として、パートナーの好みや、性的活動、またSTEM教育を選ぶ男女の割合などについては、生活水準の高い先進的な国ほど性差が減少している傾向がありました。

これに関しては、例えば性的行動については、先進国ほど男女ともにカジュアルな考えで性行為に及びやすいことが示されています。その理由について、研究者は先進国ほど、避妊方法が豊富に揃えられているため、女性もセックスにカジュアルになるからではないかと推測しています。