●この記事のポイント ・U-NEXT、コンテンツ数で優位性、継続的にシェアを伸ばして国内動画配信シェア2位 ・U-NEXT HOLDINGS、25年8月期第2四半期は上半期ベースで6期連続の過去最高益を記録 ・店舗・施設ソリューション、通信・エネルギー、金融・不動産・グローバルなどBtoBも幅広く展開
Netflix、Amazon Prime Video、Disney+など、そのグローバルな資本力を存分に活かした外資系企業が強さを示す動画配信サービスにおいて、国内勢の筆頭格としてU-NEXTが業績を伸ばしている。グループの持ち株会社であるU-NEXT HOLDINGSの2025年8月期第2四半期決算短信によると、売上高は23%増の1867億円を達成。連結純利益は前年同期比8%増の94億円となり、上半期ベースで6期連続の過去最高益を記録した。 同グループは動画配信のU-NEXTのほか、長い歴史を持つ店舗向け音楽配信サービスやDXを推進するUSEN、施設向け自動精算機、通信・電力サービスなど、さまざまな分野の子会社を傘下に持つ。その内実と好調の背景、そして成長戦略について、U-NEXT HOLDINGSで執行役員CFOを務める西本翔氏に取材した。
●目次
- U-NEXTが「ネトフリ」や「アマプラ」を押しのけて成長を続ける理由とは?
- to B事業では祖業の音楽配信を出発点に、店舗経営の川上から河口まで伴走
- 「連結営業利10%成長」という高いハードルを越える成長戦略とは
国内の動画配信サービス市場において、U-NEXTは主力プレイヤーの中でも継続的にシェアを伸ばしている唯一のサービスであり、2024年時点で約18%のシェアを獲得し国内第2位(※)につけている。トップシェアのNetflixは微減傾向、Amazon Prime VideoとDisney+がともに横ばいで推移するなかで、U-NEXTの好調ぶりは際立つ。その要因は何だろうか。 ※出典: GEM Partners「動画配信(VOD)市場5年間予測(2025-2029年)レポート」
「まず同業に対する差別化戦略という部分では、コンテンツの数に優位性があると考えています。NetflixやAmazon Prime Videoなどはオリジナルコンテンツが評価されていますが、当社には競合では見られない作品の数に強みがあるので、外資と共存することが可能なのです。2025年8月期の上半期について言うと、国内独占であるイングランドのプレミアリーグ(1部)などを配信する『サッカーパック』の新設が新規ユーザーの獲得、ひいては大幅な増収に貢献しています。
そしてもう1つ大きなポイントになったのは、2023年にTBS、テレビ東京、WOWOWらの合同動画配信サービスとして運営されていたParaviを統合したことです」
それまでU-NEXTでは比較的ドラマが弱かった、と西本氏は語る。国内ドラマは在京キー局が運営する動画配信サービスに流れることが多く、U-NEXTのような放送局と資本関係のない、独立資本の動画配信サービスがキラー級のコンテンツを獲得することは容易ではなかった。そこにParaviの統合が大きなターニングポイントとなり、TBSとテレビ東京で放送中のドラマをU-NEXTで提供できるようになった。奇しくもその直後に、TBS制作のドラマ『VIVANT』が大ヒットとなり、U-NEXTへの新規ユーザー導入に非常に強いドライブをかけることになったのだという。
「U-NEXTの特異性という点では、以前からある独自のポイントをうまく活用できているということもあると思います。ポイントはユーザーの継続率向上につながっています。
具体的には、U-NEXTのポイントは、動画のほかに提供している電子書籍の購読にも使っていただくことができるため、ポイントをコミックの購入に使われるユーザーは1巻、2巻、3巻と継続的に購入されることが多いのです。追加料金なく毎月1200円分の電子書籍やコミックを購入できるので、エンタメファンの方ほどポイントのメリットを感じていただき、結果、U-NEXTの契約期間が長くなる、この効果は大きいと考えています。さらにもう1点、ポイントのさらなる大きな役割として、フレッシュな映画コンテンツを確保する武器となっています」
実は一般的に、映画の配信権を保有している権利者は、劇場公開から間もない「鮮度の高い」映画をサブスクリプション型の動画配信サービスに出すことには消極的だという。早い話、権利者としては、自社のキラーコンテンツである最新映画を“旧作”と一緒くたに、見放題で並べられるのは好ましくないわけだ。それは製作費の回収という意味合いでも、より収益化を見込める配信形式が求められる。
「そこで、当社ではポイントを使った『ペイパービュー(Pay Per View/都度課金)』という提供形態をとれることが効いてきます。フレッシュな作品をそれだけのバリューがあるコンテンツとしてお客様に訴求することができますし、ユーザーに購入していただいた収益をシェアするという形で、権利者さんには具体的なメリットをご提供できます。このように、鮮度が高いコンテンツをラインナップに取り揃えられることが、サブスクリプションのみのサービスとの差別化やユーザーの満足度向上を通して解約率の低減につながっていて、これはポイントという仕組みがあるからこそできていることだと考えています」
こうしたU-NEXTならではの特徴の数々が、U-NEXT HDのコンテンツ配信セグメントにおける加入者、売上等の好調な推移に貢献している。前年同期比で18%増収、32%営業利益増益という破竹の勢いを示す現状は目を見張るが、その反面、年を追うごとに成長速度を継続するハードルは高くなっていきそうにも感じられる。
「少なくとも、今後3~5年程度の期間では定額制動画配信サービスの市場は拡大を続けると予測しています。この事業環境下で、安定的な成長を実現するための施策を引き続き打っていきます。動画配信サービスは、基本的にはユーザー数の増加がそのまま収益増に直結するものです。実際、上半期に課金ユーザーが9%増加し、ARR(年間経常収益)は10%の増加となっています。今後も追い風を利用して、収益の堅調増加を実現していきたいと考えています」