判事はロスによるヘッドノートの利用は「商業的」性格を有しており、ロイターの利用とは「異なる目的や性格」を持たないと判定、ロスはウエストローと直接競合するツールを作成するためにヘッドノートを利用したため、変容的利用は認められないとした。

ロスは、「ヘッドノートを数値データに変換し、それをAIに入力したが、検索ツールの出力としてヘッドノート自体を表示することはなかった」と主張したが、判事は、中間的利用であっても最終的な目的が判例を検索することにあり、これはロイターのヘッドノートや キー・ナンバー・システムが意図した目的と同じであるとした。

ロスは過去にコンピュータ・プログラムの互換性を確保するために中間的なコピーが認められた判例に依拠した。つまり「競合他社がイノベーションのためにコピーが必要だった」場合である。しかし、判事はこの理屈はコンピュータ・プログラムに関するコピーのケースに限られると判断した。

たとえば、判事はグーグル 対 オラクル事件の米最高裁判決とは異なるとした。この判決では、グーグルによるオラクルのコードのコピーがフェアユースと認められたが、それは異なるプログラム同士が連携するためにそのコードが必要だったからである(詳細は拙著『国破れて著作権法あり~誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか』第5章「オラクルの1兆円の損害よりも社会全体の利益を優先させた米最高裁」みらいパブリッシング 参照)。

一方、今回の件では判事は、「著作権において、コンピュータ・プログラムは書籍や映画、その他多くの文学作品とは異なり、ほぼ常に機能的な目的を持つ」とするグーグル判決からの引用を紹介し、「こうしたプログラムにおけるフェアユースの考慮点は、書かれた言葉をコピーするケースには必ずしも当てはまらない」と述べた。

第4要素(著作物の潜在的市場や価値への影響)➡フェアユースに不利

ロスの製品はウェストローの市場代替物となることを目的としており、ロイターがヘッドノートをAIの訓練データとして、ライセンス供与するという潜在的な派生市場に悪影響を与える可能性があると判事は強調した。法律意見に関する情報へのアクセスに公共的な利益があるとしても、そのことは第4要素の分析には影響しないと判事は述べた。