研究者はその理由の一つとして「社会的時差(ソーシャル・ジェットラグ)」を指摘しています。
夜型の人は本来、朝ゆっくり起きて夜に活動するリズムを持っています。
しかし高学歴者の多くはオフィス勤務など朝早く出勤しなければならない仕事に就いており、自分の体内時計と社会のリズムがズレたまま生活することを強いられているケースが多いのです。
このズレによって十分な睡眠がとれず、脳が回復する機会を失い、長期的には認知機能に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。
2つの生活習慣が脳に追い打ちをかけていた
チームはさらに、夜型が認知機能に与える影響の一部は、2つの生活習慣によって媒介されていることも突き止めました。
具体的には、
・睡眠の質の低下
・現在進行形での喫煙習慣
です。
この2つが、夜型の人の認知機能低下の原因の約25%を占めていたのです。
たとえば夜型の人は、深夜にスマートフォンやテレビを見る時間が長くなりやすく、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が遅れて睡眠の質が低下しがちです。
また、ストレスや眠気覚ましを理由に喫煙に依存する傾向も見られました。
このような習慣が、さらに脳に悪影響を与え、認知機能の持続的な低下を招いていると考えられます。
興味深いのは「飲酒」や「運動不足」も夜型に多い傾向があるものの、これらは認知機能の低下には直接的な影響を示さなかったという点です。
つまり、夜型であっても睡眠の質の維持と禁煙にポイントを絞ることで、ある程度、認知機能の低下リスクを軽減できる可能性があります。

チームは「高学歴の人々は責任の重い仕事や長時間労働によって、生活リズムを自分に合わせる柔軟性がない」とも指摘しています。
一方で、学歴が中程度か低い人々は、比較的自分のクロノタイプに合った勤務時間を選びやすい職に就くことができ、体内時計に逆らわない生活ができていることが、リスク回避につながっているのかもしれないと述べました。