この光の滑らかさは、他の突発現象――たとえば活動銀河核(AGN)の変動や磁場によるフレアとは異なる起源を示唆しています。
さらに、ENTの発生源はいずれも銀河の中心付近に位置しており、超大質量ブラックホールとの関係が強く示唆されました。
観測から得られたスペクトルには、水素やマグネシウムの広い輝線が含まれており、これはブラックホール周囲で起きる高温ガスの運動を示すサインでもあります。
ENTが発するエネルギー、発光期間、スペクトル、そして位置――どれを取っても、従来の爆発現象では説明がつかず、残された最も合理的な解釈が「高質量恒星の潮汐破壊(TDE:tidal disruption event)」だったのです。
つまりは、質量の大きな恒星が超大質量ブラックホールによって引き裂かれたことを意味しています。
「ブラックホールに食われる恒星」が明かす宇宙の進化
では、ENTとは何を意味しているのでしょうか。
チームは、ENTの発生源が太陽の3倍以上の質量を持つ高質量恒星であり、それが太陽の1億倍を超える質量をもつ超大質量ブラックホール(SMBH)に接近して引き裂かれた結果であると結論づけました。
つまり、ENTは「巨大な恒星がブラックホールに飲み込まれる瞬間を宇宙スケールで観測した」現象だったのです。

このとき、恒星の物質の一部が重力によって引き寄せられ、光速に近い速度でブラックホールへと落下し、巨大なエネルギーを放出します。
その放出エネルギーは、核融合によって生まれる通常の恒星のエネルギーを遥かに超え、極端に明るく輝きます。
特筆すべきは、その持続時間です。
ENTのフレアは平均で約200日以上続き、超新星とは比べものにならないほどのエネルギーと寿命を持ちます。