宇宙の歴史上、最も強大なエネルギーを放った現象は「ビッグバン」と考えられています。
そして今回、米ハワイ大学天文学研究所(IfA)により、ビッグバン以来最大のエネルギー放出となる爆発現象が観測されました。
この現象は「極端核過渡現象(ENT:Extreme Nuclear Transients)」と呼ばれており、太陽の3倍の質量を持つ恒星が超大質量ブラックホールの重力によって引き裂かれることで生じたとされています。
研究の詳細は2025年6月4日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。
目次
- 超新星爆発すら相手にならないエネルギー
- 「ブラックホールに食われる恒星」が明かす宇宙の進化
超新星爆発すら相手にならないエネルギー
今回観測された新たな現象「ENT」は、これまで知られていたどの爆発的現象とも異なる性質を持っていました。
研究チームが注目したのは、欧州宇宙機関(ESA)のガイア衛星などで記録された、遠方銀河の中心から放たれた異常に明るく、かつ非常に滑らかな閃光(フレア)です。
これらは1年以上にわたって強い明るさを保ち、まるでブラックホールがゆっくりと恒星を吸い込んでいるかのような持続的かつ穏やかな明滅を示していました。
その中でも特に注目されたのが「Gaia18cdj」と呼ばれているENT現象です。
このENTは、たった1年で太陽100個分の一生涯のエネルギーを放出し、これまで最も強力とされていた超新星の25倍ものエネルギーを記録しました。

ENTの特徴は、単なる明るさではなく、その「長さ」と「なめらかさ」にあります。
通常の超新星は数週間で暗くなってしまうのに対し、ENTは150日以上かけてじわじわと輝き続け、変動の少ない光度曲線を描きます。