京都独自のスタートアップエコシステム

 中原氏の言葉からは、京都府が「IVS」を単なるイベントとしてではなく、京都の産業構造そのものを変革し、未来を創造するための戦略的な一手として捉えていることが明確に伝わってくる。大学や研究機関が持つシーズを核とした「ディープテック」という圧倒的な強みを軸に、IVSが呼び込んだVCや、今後さらに呼び込もうとしているビジネス人材が融合することで、京都は「知」と「事業化」が高速で循環する、独自のスタートアップエコシステムを築こうとしている。

「完成された街」ではなく、常に変化し、関わる一人ひとりの手によって未来がつくられるように、行政が旗振り役となりながらも、多様なプレイヤーを巻き込み、有機的に成長するエコシステムを目指している。

「起業家の方々を応援することで社会が変わる」という中原氏の信念は、まさに行政が果たすべき新たな役割を示唆しているのではないか。IVSを起爆剤とし、京都が「ディープテックの聖地」として世界にその存在感を示す日は、そう遠くないかもしれない。古都が放つ、新たなイノベーションの光に期待が高まる。

(文=横山渉/ジャーナリスト)