この心理的な変化は、まるで「魔法のレンジ」を使って料理の全工程を省略しているようなものです。

自分で包丁を握らず、火加減も調整せず、完成品だけを口にしていては、本当の“料理の腕”は育ちません。

そんな魔法のアイテムがあれば、自分で料理を作ろうという気持ちも起こらないでしょう。

そして、いつまで経っても「自分は料理できないから……」と消極的なままです。

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魔法のレンジがあれば、料理する技術も意欲も失われる。自信も培われない / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

同様に、ChatGPTが出す答えをそのまま受け取るだけでは、自分の頭で考え、理解するプロセスが育ちません。

学習に対する意欲や自信が失われるのも当然です。

さらに見逃せないのが、「評価の不公平さを感じている学生ほど、ChatGPTに頼る傾向がある」という点です。

「頑張っても正当に評価されない」と感じている学生は、AIに解決策を求めやすくなっている可能性があるのです。

ここには、単なる“学生の怠慢”ではなく、教育制度への不信感が背後にあるとも考えられます。

また今回の研究では、開放性の性格特性がAI使用と有意な関連を示しませんでした。

このことは、開放性の高い学生は新しい技術を受け入れやすい一方で、「独自性」や「自分で考えること」を大切にするため、AIに頼りきらない可能性を示しています。

もちろん、今回の研究には限界もあります。

たとえば、実際の課題でAIが使われたかどうかを直接観察したわけではなく、自己申告ベースであるという点。

また、対象がパキスタンという特定地域の学生に限られており、文化や教育制度の違いが他国と一致するとは限りません。

それでも本研究は、ChatGPTのような生成AIが、“学ぶ”という営みにどのような歪みをもたらすのかを明らかにした、意義ある試みといえるでしょう。