そこで今回、アジーム氏ら研究チームは、それらの点を含め、生成AIが学生にどんな影響を及ぼすのか調査しました。
この研究がユニークなのは、単に「AIを使う学生の成績は?」というシンプルな問いにとどまらず、以下のような複合的な視点で構成されている点にあります:
- 学生の性格特性(ビッグファイブ:誠実性、開放性、神経症傾向)
- ChatGPTを中心とした生成AIの学業利用頻度
- 学習に対する自己効力感(”自分ならできる”という感覚)
- 学習性無力感(”やっても無駄”というあきらめ)
- 実際の成績(CGPA)
- 評価の「公正さ」に対する主観的な印象
調査はパキスタン国内の3大学に在籍する大学生326人を対象に、3回にわたるオンラインアンケート形式で実施されました。
すべての項目には、心理学で実績のある尺度が用いられ、学業成績は学生の提出した実際のCGPA(累積成績平均)で客観的に評価されました。
では、どんな結果になったでしょうか。
ChatGPTに課題を任せる学生、は「成績」と「学習に対する意欲・自信」が低い
まず最も明確に表れたのは、誠実性の高い学生ほど、ChatGPTを学業であまり使わない傾向があるという点です。
真面目で努力を重視する学生は、たとえ便利でも「自分の力でやりたい」と考えるようです。

一方で、AIを多用していた学生には、学習に対する自信(自己効力感)が低く、何をしても無駄だと感じる「学習性無力感」が強いという心理的傾向が見られました。
これらはいずれも、学習へのモチベーションを損なう強力な要因です。
また、生成AIを使っている学生は、平均的に成績(CGPA)が低い傾向にありました。
ただし、これは「AIを使ったから成績が下がった」という因果関係を直接示すものではなく、AIへの依存が“思考の放棄”につながり、結果として学びの質が下がっている可能性を示唆しています。