昨年6月には天皇皇后両陛下が国際親善のため英国を訪れた。直前の記者会見で天皇陛下は「過去の歴史に対する理解を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切」と語り、訪英中には陛下とチャールズ国王は互いに日英の最高勲章を贈りあった。現在の日英友好の絆を示す印といえよう。

しかし、英国では大戦の終結となったVJデーを祝う伝統は継続している。帝国戦争博物館のウェブサイトに掲載されているVJデーを喜び合う写真や映像を目にするとき、悲しく、つらい思いをしない日本人はいないのではないか。

VJ Dayのようす IWM Londonより

東京大空襲のルメイの本

大戦中に米陸軍航空軍の将軍として東京大空襲を指揮したカーティス・ルメイの伝記「東京大空襲を指揮した男カーティス・ルメイ」(ハヤカワ新書)の著者で学習院大学文学部教授の上岡伸雄氏が朝日新聞のインタビュー記事(4月9日付)でこう述べている。

東京大空襲を実行した人物として「残忍なサディストというイメージ」があるが、「合理的で現実的な人」だったことが分かったという。「少しでも早く戦争を終わらせるよう合理的な方法を採る。それが『民間人にある程度の死傷者を出すことなく戦争に勝つことはできない』という考え」につながった、と説明する。「ルメイが特別な悪魔というわけではなく、それが戦争だということなのでしょう」。

日本政府は1964年、航空自衛隊発展の功績でルメイに勲一等旭日大綬章を授けた。市民団体らが政府に対し、叙勲の取り消しを求めている。

今も世界中で戦争や紛争が続いている。「『自分が絶対に正しいとは限らない』という心を誰もが持たなければならないと思います」という上岡教授の言葉をかみしめたくなる昨今だ。

※「メディア展望」(新聞通信調査会発行)5月号の筆者記事に補足しました。