つまり、過去の“あり得たかもしれない自分”に意識が奪われることで、今の自分を肯定できなくなっているのです。
そうなると、現実での行動エネルギーが枯渇し、文字通り「今を生きられなくなる」のです。

もうひとつの傾向は、「空想することが現実感覚をゆがめる」というもの。
反事実的思考にとらわれる人は、いわば心の中にパラレルワールドを作り出し、その「自分にとって都合の良い空想世界」を楽しむ人のようです。
しかし、2018年の研究では、そのような種類の空想の傾向が精神的な苦痛をもたらしやすいことを示しています。
反事実的思考の人は、「過去のある段階で分岐した理想的なパラレルワールド」と「現実」を比較することで、現在の人生がつまらなく、意味のないものに感じてしまうのです。
たとえば、「あの人と結婚していれば、きっと幸せな家庭が築けたはず」といった思考が続くと、今のパートナーや生活がまるで“失敗作”のように感じられるかもしれません。
では、もしこのような傾向が自分にあるとしたら、どうすれば良いでしょうか。
トラバース氏は、反事実的思考から抜け出すための方法も教えています。
反事実的思考から抜け出すための実践的アプローチ
では、反事実的思考がクセになっている人は、どうやってそこから抜け出せばいいのでしょうか?
トラバース氏は、次のような具体的対処法を提案しています。
① 思考のスクリプトを書き換える
「もしあのとき…」と考え始めたら、すかさず「今、何ができるか?」という問いに切り替えてみましょう。
後悔から何かを学ぶことは大切ですが、学んだことを「次の行動」に活かさなければ意味がありません。
例:「あの時、プレゼンをうまくできなかった…」 → 「次はどんな準備をすれば良いだろう?」