量子もつれとは、離れた物体同士の状態が互いに絡み合い、一方を観測すると他方の状態も連動して決まるという不思議な現象です。
重力以外に接点を持たない2つの物体が量子もつれを示したならば、それは重力自体が量子的な相互作用を媒介しているという決定的な証拠になるでしょう。
研究者たちは「こうした改良によって、2つの振り子が重力のみで相互作用する実験への扉が開かれます。それによって重力が量子的かどうかを直接確かめられるようになるでしょう」と未来への展望を語っています。
今回の研究は、古典物理学から量子物理学への架け橋となる全く新しい実験基盤を提供しました。
その達成には、相対性理論や量子力学といった物理の深い理解のみならず、実験装置の設計・微細加工・光学制御・電子制御など幅広い工学的技能が求められました。
機械工学をバックグラウンドに持つ研究者たちは、「幅広い知識と技術を総動員することで、この科学で最も基本的な疑問の一つに挑めることに大きなやりがいを感じています」と語っています。
重力は果たして量子なのでしょうか――この壮大な問いに実験で答える日が、少しずつ近づいているのかもしれません。
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元論文
Active laser cooling of a centimeter-scale torsional oscillator
https://doi.org/10.1364/OPTICA.548098
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部