小泉氏には、「国民の期待を裏切って来た」と日本国民が集合的に、また、深層的に思えるような過去の実績が社会の重低音として流れている。メディアとしては、ここをうまく刺激することで、小泉氏への攻撃・論難を容易に出来る。
「直前は政治改革の責任者であり、本来、3月までに与野党で結論を得るはずが、結局まとめられずに敵前逃亡したように見える」「その前は、選対委員長であったが、時期を開けての解散を主張していた総理の考えとは異なる早期解散を主張し、結局、少数与党に転落してしまった」「総裁選にさっそうと打って出て論戦に加わったのは良いものの、底の浅さを露呈してしまった」といった最近のものから、「セクシーという用語を変に用いたことが注目されたが、結局、環境大臣として、何の実績も残せなかったように見える」「そもそも、約10年前に自民党の農林部会長に就任したにも関わらず、本質的改革を進めることが出来なかったことが、今回の遠因ではないのか」といった、少し前のものまで、色々な「薪」がある。
※過去の言動が、今の炎上によって掘り返されて、さらに燃え広がることを「薪をくべる」とネット上では言われるようだ。つまり、過去の言動が「薪」というわけである。
こう見ると、さっそうと2,000円を掲げて注目を浴びている進次郎氏の前途は多難であると言わざるを得ない。
3. 進次郎氏の逆襲
ただ、私の見立てでは、進次郎氏は、私が上記で述べたことなどは百も承知の上で、敢えて、大勝負に出ているように思われる。つまり、敵を作ることを敢えてやっている、というのが私の見方だ。
かつて、私は、このメルマガ論考で、小泉進次郎氏と近衛文麿氏の比較論を展開したことがある。詳しくは、そちらを参照してもらいたいが、両氏には、世襲(有名な家柄)、親類を実の親と思って育った過去、身内に芸能人、若い時分から注目されて育ってきた、などの共通点がある。
結論的には、近衛文麿氏は、類まれなる才能と気迫を持ち合わせていたにも関わらず、最後は、上記のような背景もあって八方美人化せざるを得ず、信念に基づいた思い切った・大きな決断が出来なかった、というのが私の見解だ。