フィリップス氏は「このフォーラムの投稿者たちは、陰謀論によって家族が受けた悪影響や、求めるサポートネットワーク、そして家族間の摩擦を解消するための様々な戦略について、実に多くを語っている」と指摘します。
具体的には「辛抱強く接し、政治の話題を避ける」という穏健な方法を勧める声から、「もはや離婚や接近禁止命令もやむなし」といった極端な決別を提案する声まで、意見は分かれていました。
皮肉なことに、陰謀論を信じる側の家族も信じない側の家族も、どちらも「家族を救う」という同じ目的で衝突か断絶という相反する手段を取ってしまっている場合が多いとフィリップス氏は述べています。
また、この掲示板上では「陰謀論が家族に及ぼす影響をもっと研究してほしい」という切実な訴えも散見され、フィリップス氏自身、この点に心を動かされたと明かしています。
陰謀論は“個人の趣味”で済まない――家族崩壊の連鎖をどう止める?

今回の研究から、陰謀論は単に信じる本人だけでなく、その周囲にいる家族という社会の最小単位にも深刻な影響を与え得ることが明らかになりました。
家族を亡くしたかのような悲嘆や、関係断絶の危機、そしてそこから生まれる新たな支え合いの必要性など、その影響は極めて深刻です。
Qアノンという一例を通して、陰謀論が家族崩壊を招くリアルな実態が浮き彫りになったと言えるでしょう。
実際、2024年に発表された15名へのインタビュー研究でも、信奉者の性格が一変してしまうこと、家族との感情的・物理的な距離が生じること、激しい口論が増えること、そして様々な和解の試みが行われていること、という四つの共通テーマが報告されています。
Qアノンによって家族関係が悪化する傾向は、こうした少人数の聞き取り調査から今回の大規模なテキスト分析まで、一貫して観察されているのです。