そして高エネルギー部分ではその広がった余地を利用することで、瞬間的に場違いな超高エネルギー粒子を生成できるわけです。

言い換えれば、穏やかな量子の波を巧みに足し合わせて、ある場所だけにエネルギーが「無から生まれる」ように見せているのです。

量子の超挙動は古典物理の外れ値とどう違うのか?

古典系で「外れ値」と呼ばれるものは、サイコロを振って 100 回中 90 回も6が出るような“めったに起きない統計的偏り”です。確率分布の端っこにたまたま引っかかっただけなので、どんなに驚く結果でも――あらかじめ決まっている範囲を超えることはありません。一方、量子の超挙動は「めったに起きない」点では似ていますが、本質は統計の振れ幅ではなく波どうしの干渉が生む“設計された錯覚”にあります。低エネルギーの波を綿密に重ね合わせると、全体のエネルギー帳尻は合わせたまま、ある場所だけが理論上の上限をすり抜けて“高エネルギースポットライト”のように輝きます。ここでは確率分布の外へ飛び出すのではなく、波の位相と強さをミリ単位でそろえた結果として、平均値の檻を局所的に“抜け穴”に変えてしまうのです。つまり古典的な外れ値は偶然の産物で必ず元のレンジにとどまりますが、量子の超挙動は干渉という道具でレンジそのものの隙間を作り出し、一瞬だけ“ありえない”値を実体化させる――そこが決定的な違いです。

別のたとえでは、水面のさざ波同士が重なって一瞬だけ大きな波しぶきを作る様子とも言えます。

たとえば海でも大きな波しぶきは一見すると突然エネルギーが生じたように見えますが、実際には周囲とのエネルギーのやり取りで成り立っています。

同様に、この量子状態では全体としてほとんどエネルギーを持たないはずの系に、局所的にエネルギーが集中しているのです。

(※全体ではエネルギー保存則をきちんと守っていますが、局所的な再配分を行うことでほとんどエネルギーを持たない系でも高エネルギー粒子出現が実現します。実際、その量子状態では調和振動子全体としてのエネルギーは有限で、きちんと収束することが確認されました。)